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インテグレーション

2025/03/27

ドイツに毎年同じ場所ミュンヘンに行くことによって、時代において、保育の考え方、特に保育用語の使い方の更新をすることができます。その一つが、以前の訪問では、子どもたちに対する科学的視点を持たせる保育の取り組みを「小さな科学者たち」という説明をしていましたが、今回は「MINT」という取り組みと説明していました。もう一つの今回の説明の中で「インクルージョン」という言葉の使い方に変化が見られました。日本では、今保育の中で「インクルージョン」「インクルーシブな保育」が盛んに提案されています。今年の保育学会でも、それをテーマにしたシンポジウムがいくつも計画されています。しかし、その多くは、障害児をどのように位置づけていくか、障害児も一緒に保育していく上の課題など、どのように障害児を包括していくかを課題にしています。

2005年3月に招待されて参加したミュンヘン市で開催された世界保育大会のテーマは、「インクルージョン」でした。その内容は、簡単に言うと、いわゆる統合保育と言われていたような、異質なものを統合する「インテグレーション」という考え方から、全てを包括する考え方である「インクルージョン」に移行しようというものでした。もちろん、それは障害児に限ったものではなく、不登校の子も含め、すべての子にすべての教育をという観点からも除外することのない学習権を保障しようというものでした。

会場であるミュンヘン大学の前で

しかし、今回のドイツ訪問では、全ての保育の考え方はインクルージョンですが、その対象は、種に移民、難民の子に対して使い、障害児の受け入れに対しては、インテグレーションという言葉を使っていました。障害児はもちろん特別な施設に入れずにほかの子と同じ法句を受けるのですが、その園は、地域で指定された「インテグレーション園」という園で、その園の保育者の配置基準は、いわゆる健常児と呼ばれている子1人に対して1.5人という計算をするそうです。どのような経緯を経てこのような使い分けをしたのでしょうか?

このような説明がされています。インクルージョン保育とインテグレーション保育の違いについてですが、大きなポイントは「どのように子どもたちを受け入れるか」という考え方の違いにあります。

インクルージョン保育(Inclusion)

  • すべての子どもを「当たり前に」同じ場で育てる考え方。
  • 障害の有無や発達の違いに関わらず、環境や指導法を調整しながら、全員が一緒に学び育つ。
  • 個々のニーズに応じた支援を提供し、保育環境を整えることが前提。

インテグレーション保育(Integration)

  • 「統合」という意味を持ち、特別な支援が必要な子どもを、通常のクラスに「適応させる」考え方。
  • 既存の保育環境に特別な支援を加えることで、一部の子どもを適応させることが目的。
  • 主流の環境に溶け込めることが前提になりやすく、場合によっては別室での対応や、部分的な統合が行われることもある。

この二つの違いをまとめると、インクルージョンは「環境を子どもに合わせる」、インテグレーションは「子どもを環境に適応させる」という視点の違いがあるようです。そのような意味合いから、現在の保育や教育の現場では、インクルージョンの考え方がより重視されるようになってきているのです。子ども一人ひとりの個性を尊重し、全員が同じ場で共に成長できる環境を整えることが求められているからです。

では、どうして最近、ドイツではインクルージョンは多様性に対しての配慮に使い、障害の子に対してはインテグレーションを使うことが多いのでしょうか。次回、その点について考察してみようと思っています。

成長展2

2025/02/15

園の行事の成長展を迎えるにあたって、2018年2月14日にこんなブログを書いています。

「先日、今年の1月に我が子が生まれた息子から面白いことを聞きました。我が子の成長を毎日見ていると、驚くことが多いといいます。保育に関係ない仕事をしている息子にしてみれば、初めて赤ちゃんを毎日眺めているので、そういう感想を持つのは当然です。あるとき、赤ちゃんが自分の手で足をつかむのを見て、すごいと思ったそうです。そんな息子が、赤ちゃんとは、どんなことをするのかということを知りたくて、育児雑誌を買ってみたそうです。すると、そこに「赤ちゃんは、4か月を過ぎるころから、手で自分の足をつかむようになる」と書かれてあるのを見て、がっかりしたそうです。我が子のしぐさが、別に天才とかは思わないのですが、このころは誰でもするということが書かれてあると、なぜかがっかりしたというのです。しかも、次には何々するとか、何か月になるとこんなことをするようになるというようなことが書かれてあり、なんだか、未来までわかってしまうようなつまらない感覚を覚えたそうです。そして、「もう、絶対、育児雑誌なんか買わない!」と怒っていました。

なんだか、その気持ちはわかるような気がします。人の成長を見るのは、驚きがあり、とてもうれしいことであり、次への期待感が生まれます。特に我が子に対してはその気持ちは強いでしょう。しかし、育児雑誌などで、その成長過程を読むと、成長そのものの驚きや喜びよりも、そこに書かれてある平均値と我が子を比較して、我が子のほうが進んでいるという喜びになってしまいます。また、そこよりも遅れていると心配になり、我が子を伸ばそうと必死になってしまいます。

私たちが保育の指針として根拠とする「保育所保育指針」には発達過程が書かれてあります。そこには、「おおむね生後何カ月には、こんなことができるようになる」ということが書かれてあります。保育者の専門性として、子どもたちの発達過程を理解しておくことと言われることがあります。しかし、それを覚えておくことにはどのような意味があるのでしょうか。子どもの成長は、目標ではなく、課題ではなく、喜びであるような保育を展開する必要があります。また、他の子との比較をするのではなく、その子の成長を喜ぶことが必要です。保育、育児の楽しさは、子どもたちの成長する過程を知識として知ることではなく、その過程を見ることができること、そして、それに関わることができる喜びです。

このような子ども成長を保護者とも共有して喜ぶことができるようにするためにいろいろな方法があります。その一つが行事を通して保護者に伝えるということがあります。そこが、小学校における行事と大きな違いがあると思っています。小学校における行事では、普段の教育の成果を見せます。私が、教員の時に、2年生の担任を最後に、教員をやめることになった最後の授業で、保護者を招待をして「お別れ会」をしたことがありました。その会自体は、保護者が言いだしたのですが、内容は子どもたちと話し合って決めました。まず、出し物のプログラムは、時間割にしました。1時間目、算数。ここでは、子どもたちが交代で掛け算九九を暗唱しました。2時間目、国語では、1年間の国語の教科書の中で子どもたちが一番好きな単元が「片足ダチョウのエルフ」だったので、その紙芝居をみんなで作りました。そして、読み手は、交代で、国語の教科書のその部分を音読したのです。この行事を通して、私は、1年間の子どもの学びの成果を紹介したのです。

しかし、乳幼児教育では、少し違うのではないでしょうか。それが、「教科」と「領域」の違いなのです。

締結式

2025/01/20

今年1月15日(水)に新宿せいが子ども園(東京都新宿区)と鳥取県日野郡日南町との間で、連携協定を結びました。

日南町としては、まち未来創造に向けた6つのプロジェクトのうち「まちのイメージ創造・発信」「若者・子育て世代転入超過実現」「関係人口・交流人口拡大」の3つのプロジェクトの1つの柱として「新宿せいが子ども園」が実践する「見守る保育 藤森メソッド」(以下「見守る保育」)に注目し、今回の協定に繋がりました。

今後、新宿せいが子ども園と日南町が信頼関係に基づき、交流・連携を深めることで、日南町の幼児教育、学校教育、生涯学習などの教育を活性化を行い、相互の活性化を期待してのことです。

この締結の目的ですが、日南町園・小中一貫教育を充実強化として「見守る保育」の特色である「異年齢保育」等を取り入れることで、教育環境をアピールし、町外からの転入児等と増やすことが目的の一つです。また、新宿せいが子ども園の保育教諭、保護者、関係者との交流活動も活発に行い、関係人口の拡大を結びつけるとともに、災害協定の締結も目指します。

今後、新宿せいが子ども園と日南町が信頼関係に基づき、交流・連携を深めることで、日南町の幼児教育、学校教育、生涯学習などの教育を活性化を行い、相互の活性化を期待できると日南町ではみています。具体でに内容として

1.見守る保育 藤森メソッド」の実践

2.非認知能力の育成実施

3.STEM(ステム)教育の実践

4.講演会、研修会の開催

5.交流事業(子ども、保護者、短期留学、自然環境、農林産物、など)

6.災害時の連携

などがあります。イタリアのレッジオの取り組みのような、幼児教育育から町おこしができるのいいですね。

庁舎の中央部で調印

日南町町長、教育長、教育委員会などとギビングツリーからのメンバー