ドイツに毎年同じ場所ミュンヘンに行くことによって、時代において、保育の考え方、特に保育用語の使い方の更新をすることができます。その一つが、以前の訪問では、子どもたちに対する科学的視点を持たせる保育の取り組みを「小さな科学者たち」という説明をしていましたが、今回は「MINT」という取り組みと説明していました。もう一つの今回の説明の中で「インクルージョン」という言葉の使い方に変化が見られました。日本では、今保育の中で「インクルージョン」「インクルーシブな保育」が盛んに提案されています。今年の保育学会でも、それをテーマにしたシンポジウムがいくつも計画されています。しかし、その多くは、障害児をどのように位置づけていくか、障害児も一緒に保育していく上の課題など、どのように障害児を包括していくかを課題にしています。
2005年3月に招待されて参加したミュンヘン市で開催された世界保育大会のテーマは、「インクルージョン」でした。その内容は、簡単に言うと、いわゆる統合保育と言われていたような、異質なものを統合する「インテグレーション」という考え方から、全てを包括する考え方である「インクルージョン」に移行しようというものでした。もちろん、それは障害児に限ったものではなく、不登校の子も含め、すべての子にすべての教育をという観点からも除外することのない学習権を保障しようというものでした。

会場であるミュンヘン大学の前で

しかし、今回のドイツ訪問では、全ての保育の考え方はインクルージョンですが、その対象は、種に移民、難民の子に対して使い、障害児の受け入れに対しては、インテグレーションという言葉を使っていました。障害児はもちろん特別な施設に入れずにほかの子と同じ法句を受けるのですが、その園は、地域で指定された「インテグレーション園」という園で、その園の保育者の配置基準は、いわゆる健常児と呼ばれている子1人に対して1.5人という計算をするそうです。どのような経緯を経てこのような使い分けをしたのでしょうか?
このような説明がされています。インクルージョン保育とインテグレーション保育の違いについてですが、大きなポイントは「どのように子どもたちを受け入れるか」という考え方の違いにあります。
インクルージョン保育(Inclusion)
- すべての子どもを「当たり前に」同じ場で育てる考え方。
- 障害の有無や発達の違いに関わらず、環境や指導法を調整しながら、全員が一緒に学び育つ。
- 個々のニーズに応じた支援を提供し、保育環境を整えることが前提。
インテグレーション保育(Integration)
- 「統合」という意味を持ち、特別な支援が必要な子どもを、通常のクラスに「適応させる」考え方。
- 既存の保育環境に特別な支援を加えることで、一部の子どもを適応させることが目的。
- 主流の環境に溶け込めることが前提になりやすく、場合によっては別室での対応や、部分的な統合が行われることもある。
この二つの違いをまとめると、インクルージョンは「環境を子どもに合わせる」、インテグレーションは「子どもを環境に適応させる」という視点の違いがあるようです。そのような意味合いから、現在の保育や教育の現場では、インクルージョンの考え方がより重視されるようになってきているのです。子ども一人ひとりの個性を尊重し、全員が同じ場で共に成長できる環境を整えることが求められているからです。
では、どうして最近、ドイツではインクルージョンは多様性に対しての配慮に使い、障害の子に対してはインテグレーションを使うことが多いのでしょうか。次回、その点について考察してみようと思っています。


