
見守る保育藤森メソッドについて
見守る保育 藤森メソッドの5つの要点
見守る保育 藤森メソッドとは
「見守る保育」とは、保育者が子どもたちを徹底的に観察し、その個性や発達段階、興味関心に合わせて適切な支援を行う保育方法です。従来の保育では、子どもたちに同じようなプログラムを提供している場合がありますが、見守る保育では、子どもたち一人ひとりが持つ個性や特性を把握し、その子にとって最適な支援を行うことが重視されます。具体的には、子どもたちの行動や表情、コミュニケーションの仕方などを観察し、その子の興味や関心を引き出すような遊びやプログラムを提供することが挙げられます。このように、見守る保育は、子どもたちの自発性を尊重し、個性に合わせた支援を行うことで、子どもたちの成長や発達を促進することを目的としています。
1. かかわりを大切にした保育 ~乳児から必要な子ども集団からの学び~

参加と参画
人類は700万年ぐらい前から、だんだんと熱帯雨林を出て草原地帯へ進出し、ついにアフリカ大陸を出ます。そして200万年ぐらい前から脳がだんだんと大きくなり始めました。脳を大きくした理由は集団を大きくしたからです。この頃、家族が生まれる。家族は基本的に子どもを育てる集団。しかし人間の子どもは成長が遅いので、父母だけではやっていけません。そのために集団を大きくしました。人間の家族というのは単体では存続できないのです。複数の家族が集まった共同体があるからこそ、人間の家族は存続できるのです。人間の社会は、もともと共同保育(共同養育)というものを重要な役割としてつくられたものだといわれています。
これからの時代に必要な力
この進化から見て、私たちホモサピエンスは、生後8か月くらいに離乳をして、子ども集団の中で育てられていったのです。その中で、社会的スキルを学ぶ、社会脳という概念が確認されてきました。トマセロによる研究では、赤ちゃんは、生後9か月ころになると、他者を意図を持った行為者と見なし、模倣や他者理解の発達を示すとしました。そして、これ以後、それまでのように他者から学ぶというだけでなく、他者を通して学ぶようになります。この三項関係は、言語の獲得においても重要であり、社会性・コミュニケーションの発達において重要な指標の一つであるとされています。この能力が、AIの進展によって改めて見直されています。それは、今後、AIには代替できないこれから必要な力として、「協働的な学び」が挙げられているのです。これは、高度なクリエイティビティと言われるもので、既知の知恵を協働によって新たな価値を生み出す力だと言われています。
乳児保育
施設での乳児保育は、当初の家庭のように、また、保育者は母親の代わりから、乳児の頃からの子ども同士のかかわりにより、社会的スキルを学び、社会の形成者としての資質を備えていきます。社会性を身につけるうえで必要な力を司る脳の感受性が高い時期は、どの分野においても乳児期であることが分かっています。イギリスの研究では、質の高い保育の特徴の一つは、子どもが中心で、保育者はつなぎ発展させる遊びや活動が多い点を挙げています。
幼児教育
AIの進展によって、子どもたちのその後の学業成績、就業生活、家庭生活において、認知的な知識の習得から、非認知能力による生きる力が求められ、それは主に幼児期で育つと言われています。そのために、幼児教育は、学校のように認知的なものを保育者から伝達することを目指すのではなく、子ども同士のかかわりから、集団的思考力や、協働思考力を身につけていくことが必要になっていきます。
2. 子ども主体の保育

民主主義
教育基本法の第1条教育の目的には、「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とあります。民主ということは、民が主体であるということであり、それが子どもの施設では、子どもが主体であるということです。そのために、就学前学校の教育は、子どもが民主主義とは何かということを理解する基礎を培わなければなりません。子どもの社会的な発達には前提条件がある。それは、子どもたちが能力に応じて、幼児教育における自分の行動と環境に責任を持つようにすることである。子どもは、参加する権利と影響を与える権利を持っています。さまざまな方法で子ども自身が表現するニーズと興味が、教育の環境と計画を形成する基礎とならなければなりません。
子どもの権利条約
乳幼児においても、「子どもの権利条約」で示された価値観と権利を反映しなければなりません。それは、子どもの最善の利益とみなされていること、子どもは参加する権利と影響力を与える権利を持っていること、子どもが自分の権利について知らされていることに基づいて保育が行われなければならないのです。
乳幼児が発達するような条件
- 自らの状況に影響力を持つことができるように、自分の考えや意見を表現することに対する興味と、そのための能力。
- 自分の行動と環境に対する責任を持つ態度の育成。
- 自分の意見をさまざまな形態で表現する権利、そして、子ども一人一人の解釈や意見が保育において確実に考慮される権利を尊重。
- 子どもの参加する能力と、子ども自身が保育に影響力を与える能力を促進する。
- 性別、年齢にかかわらず、すべての子どもが教育に対して平等に影響力をもち、参加する場や参画する場を持つことを確実にする。
- 民主主義社会で適応される参加と責任について、また権利と義務について、すべての子どもに準備させる。(民主主義の前提:1.人々の相互作用と信頼・連帯と協力が実践的な方法であるという、基本的な信念が共有されていること。 2.だれにたいしてもインクルーシヴであること)
藤森メソッドにおける参画
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ピーステーブル
子どもたちはトラブルを通して、自分自身や他者を理解し、人は違う考えを持っていてもいいのだ、ということに気付きます。このような環境を作り出すほうが、攻撃の標的を見つけるような解決法よりは望ましいと言えます。
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選択
選択するために、心内知性が必要になります。それは、「自分を見つめる力」「自分の意志を持つ」「責任を取る力」「表現力(意見、考えを伝える)」「実行機能(優先順位を考える)」です。
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マイスター制度
子どもの習熟によって、参画できる範囲を個々に与えます。
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子ども会議
物事の決定に対して、子どもたちが話し合って決めます。
3. 個別最適な支援 ~たてわりではない異年齢児保育・インクルージョン~

ひとりひとりの特性に応じる保育
年齢によって保育内容を分けるのではなく、子どもの特性・発達によって保育を行います。
インクルージョン
子どもを、男女、しょうがい、年齢、国籍などあらゆる視点によって排除しない保育を行います。
異年齢保育
- 「能力の異なる多様な者を一緒にする」という価値と、もうひとつの価値は「能力の似た者を一緒にする」というです。
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違いを知る
小さいうちに、異年齢で過ごすことによって、年齢による行動、考え、ことばの違いを知っていく必要があるのです。
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模倣相手として
他の年齢、特に自分より少し上の年齢の子を見て、真似て、発達に刺激を与えていきます。また、こうして、子ども文化は継承されていきます。
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教え、教わり、やってあげ、やってもらう
人間は社会を形成して生きてきました。その社会の一員となるための資質を備えることも教育です。それは、自分ができること、自分がすべきことを知り、そしてできないことを人に頼むことも必要になってきます。人は、支え合って生きていくために、それぞれ自立していくことが必要になります。
- 外から見える姿からの刷り込みをなくす
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いじめが少ない異年齢児集団
異年齢児集団では、年齢による差よりも、個人差を重視し、それを多様性として認めやすくなります。特に年長児にとって非常に意味があります
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アタッチメントとしての存在
異年齢の子どもからケア(気づかい)と精神的なサポートを受ける
- 異年齢の子どもたちの集団での遊びが、飛躍的に学習能力を高める。
4. チーム保育 ~多様な視点からの支え・得意分野を生かす~

- 一人の保育者が指導しやすいのは、自分のルールに従わせたいという心理が少なからずあるからであり、多様性を認め合いながら助け合う子どもたちを目指すのであれば、保育者もそうした集団になることが大切です。
- 教員が複数で多角的に見ることによって、子どもの変化に気づきやすくなります。
- クラスを超え、チームで保育することによって、状況を踏まえて仕事を分担します。
5. 学びの園庭 ~量から質へ 広さから何を学ぶかへ~






屋外においても、「子ども自ら環境に働きかけ、その相互作用により発達する」を踏まえて、環境を用意していきます。その際、屋内と違って、外気に触れながら、自然物を素材として遊ぶことを重視します。そのために、次のような用意をします。
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できるだけ自然のままで、草の多い丘があり、平地があり、木陰があり、くぼ地があり、段々があって、幼児がころんだり、走ったり、自由に遊ぶことができるような所
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夏には木陰となり、冬は日光が十分に当たるように落葉樹を植える
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幼児にはできるだけ自然の美しさに親しませたい。それには日当たりのよい運動場の一部を花畑、菜園として野菜や花を作り、それを愛育するようしむける
見守る保育 藤森メソッドの5M
(ジャパニーズスピリット)
見守る保育の“芯”にある、日本らしい5つの心
見守る保育 藤森メソッドでは、「子どもの力を信じ、環境で育てる」ために、日本の伝統的な感性を活かした5つのM(エム)を大切にしています。
それは「もったいない(MOTTAINAI)・むすび(MUSUBI)・めりはり(MERIHARI)・もてなし(MOTENASHI)・めぐる(MEGURU)」。
この“5M”は、子どもたちが自ら育ち、つながり、広がっていくための知恵です。

MOTTAINAIもったいない
子どもが本来もっている「生きる力」を奪わず、見守りながら引き出す心。

MUSUBI
むすび
人と人、違いと違いをつなぎ、関わりの中で学びあう心。

MERIHARIめりはり
静と動、緩と急。暮らしや遊びに変化とリズムを生み出す心。

MOTENASHIもてなし
相手を思い、自分を知り、心を整えて人と関わる心。

MEGURUめぐる
自然や人の恵みが巡り、つながり合い、育ちあう心。

- 見守る保育・・・子どもが本来持っている力を引き出す環境づくり
- 5M・・・その環境をつくるための「日本らしさ」から生まれた心
1. もったいない(子どもの力を遮らず、引き出す)




介入から見守り
人類はこれまで、さまざまな危機を乗り越えながら命をつないできました。そうした中で育まれてきた「生き抜く力」は、社会をつくるために必要な大切な力でもあります。赤ちゃんは、その力をすでに受け継いで生まれてきます。
だからこそ、大人の価値観で先回りしたり、手を出しすぎたりして、その力の芽をつんでしまうのは――本当にもったいないことなのです。
2. むすび(個と個、人と人、社会をつなぐ)




私たちは、社会を作り生存してきました。教育基本法の中で、教育の目的に「人格形成」と「社会の形成者としての」資質を備えることが挙げられています。しかし、個人がそのように教育されても、その個人を結び付けていかなければ社会にはなりません。人は、個人差というそれぞれ違った役割をもって生まれてきています。それぞれ違った役割を持つのは、人類という種を子孫に残すためであると言われています。人間の進化とは脳の進化であり、脳の進化とは人間を人間たらしめている前頭前野の発達に依り、他者への共感能力を高めて多くの仲間との共存をもたらしました。
人類は、200万年ぐらい前から脳がだんだんと大きくなり始めました。脳を大きくした理由は集団を大きくしたからです。人類の進化(協力を基盤)からみるコミュニケーションの起源は、「非言語コミュニケーション」であり、道徳の起源は、「援助する力」「分け合う力」「社会規範を守ろうとする力」といわれ、いずれも人と人との関係の中で発揮され、人を結びつける役割をしてきたのでしょう。
発達や能力、興味などに応じて自発的な集団が作れるよう、集団の中の個と個を密接に結びつけ、その関わりから学びをしていく環境を作っていかなければなりません。包括を意味するインクルージョンの次の課題は、お互いを結びつける「コーヒージョン」です。
3. めりはり(心と体が育つリズムある生活)




めりはりとは、緩むことと張ることで、演劇などのセリフ回しの強弱・伸縮のことを言います。人は、生活にメリハリをつけることで、生きる活力や持久力を向上させてきたのです。
保育室内での工夫によるメリハリ
- 明と暗:部屋の中がいつもこうこうとした電気の中での正確だけでなく、子どもたちにとって、うす暗い部屋やコーナーを用意することも必要です。
- 静と動:静的ゾーンと動的ゾーンを分け、じっくりと遊びに取り組む子を保障し、また、体を思いっきり動かしたい子の満足を得られるような環境を用意します。
- 剛と軟:堅い床の上だけで過ごすのではなく、やわらかいクッションの上でくつろぐことも必要です。
- 広と狭:アルコーブという壁面の一部をくぼませてつくった空間や、デンという野生動物のねぐらのことから、隠れ家、こぢんまりした小部屋などは子どもが大好きです。
- 安定と不安定:ネットの上などを歩く経験から、体のバランスを取ることを経験していきます。
- 平面と斜面:登る体験、斜面に立つ体験も足首にもいいようです。
保育での工夫によるメリハリ
- ハレとケという特別と日常な日を設けることで生活のメリハリを付け、ケの日を楽しみに待つことも、情緒を安定させます。年間行事がその役割をしていたように、園の行事を位置づけることが必要です。
- 静と動というテンションをコントロールする力が必要です。
- ホットとクールのメリハリが遊びの中で必要です。それは、我が身を忘れて熱中するゾーン体験をすることと、時間がきたら自らそれを止めて片付けるという制御力も重要です。
- わいわいと楽しく騒しくするときとじっと我が身を振り返るような静の時間が必要です。
- 活動によって、大人数で取り組むときと、少人数で取り組む時のバランスが重要です。
- 心を引き締め、緊張するときと、ゆったりとリラックスするときも必要です。
- 給食の献立に、メリハリが必要だと言われています。バランスが食には必要です。
- 昔からハレとケと言うように、行事のようなハレと日常の保育であるケが必要です。
4. もてなし(他者と自分を大切に思う心)




今後、子どもに必要な力として、知能指数(IQ:Intelligence Quotient)の高さから、心の知能指数(EQ:Emotional Intelligence Quotient)の高さが求められてくると言われています。このEQとは、自分自身を動機づけ、挫折してもしぶとく頑張れる能力。衝動をコントロールし、快楽を我慢できる能力。自分の気持ちをうまく整え、感情の乱れに思考力を阻害されない能力です。
EQのために最も大切な知性は以下の二つだと言われています。その一つは、対人知性と言われるもので、他人の気分、気質、動機、欲求を選別し、それに適切に対応する能力です。すなわち、他人を理解する能力です。この人の動機は何か、あの人はどう動くだろうか、皆と協調して動くにはどうすればいいのか、といったことを理解する能力です。
もう一つ必要な力として、心内知性があると言われています。これは、対人知性と対をなす力で、自分の中にある感情を把握し、弁別し、行動指針とする能力で、自分自身の内面に向けられる知性をいいます。心内知性は現実に則した正確な自己モデルを形成し、そのモデルを利用してかしこく生きる能力です。
これらの力が、「もてなし」として表現されてきたのです。
5. めぐる(いのちも環境も、循環の中にある)




日本では、「情けはひとのためならず」という言葉に代表されるように、「人に情けをかけることは、巡って自分に返ってくる」という考え方や、因果応報というように、「よい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがある」という考え方があり、それが、現在を生きる指針ともなってきました。
また、都市計画や建築用語には、人の動線に回遊性を持たせることで広さ(広がり)を感じさせるという計画上の意図があります。
環境の回遊性
「人」・「光」・「風」の通り道に変えることで、沢山の恩恵を受けることになるはずです。
- 動線としての回遊性(循環機能)
保育室内では、多くの子どもたちが大抵、並行して活動することが多いので、一連のスムーズな流れ(スピードやリズム感)が出来るかどうかでストレスに大きく影響します。特に自由活動中は、保育室内を子どもたちが皆、動き回っているわけで、ひとつの道を戻ろうとして渋滞など起したら、お互いに活動をわくわく感は消えてしまいます。行き止まりのない回遊的な空間では、回避ルートにもなります。子どもたちにとってどのような部屋の関係性がベストかを把握しておくことで、活動効率は良くなるのです。廻れる動線がある保育室は同じ大きさであっても空間の伸びやかさや広さをより感じることができます。異なる空間をくぐり抜けていくような動き回る動作は誰でも楽しいもの。回遊する事で視界が様々に移り広がり、いくつもの空間がつながる意識をもつことで、より広く感じることができます。
- 風と光の回遊性(保育室全体が淀みのない空間に)
風が縦横に廻りだすと、ジメジメした北側の部屋や水回り・バックヤードなどの環境改善にも役立ちます。風の道が増えることによって夏場などはエアコンをかける回数も減ります。新鮮な空気や光が廻るようになった淀みのない室内は当然、気持ちのよい場所になっていくでしょう。
動線としての回遊性
保育室内では、多くの子どもたちが大抵、並行して活動することが多いので、一連のスムーズな流れ(スピードやリズム感)が出来るかどうかでストレスに大きく影響します。特に自由活動中は、保育室内を子どもたちが皆、動き回っているわけで、ひとつの道を戻ろうとして渋滞など起したら、お互いに活動をわくわく感は消えてしまいます。その点、行き止まりの回遊的な空間では、回避ルートにもなるわけです。
しかし、ただ、単に廻れるようにするだけでは活動効率は良くなりません。子どもたちにとってどのような部屋の関係性がベストかをまず把握しておくことが大切です。廻れる動線がある保育室は同じ大きさであっても空間の伸びやかさや広さをより感じることができます。回遊する事で視界が様々に移り広がり、いくつもの空間がつながる意識をもつことで、より広く感じるのだと思います。異なる空間をくぐり抜けていくような動き回る動作は誰でも楽しいものです。同時に、ただ、「籠れる(こも)れる」ような安堵する落ち着ける居場所もとても大切な要素です。回遊性とは矛盾するようですが、決して両立は難しいものではありません。メリハリの効いた居場所もある楽しい空間作りを目指しましょう。
また、回遊性が必要なもう一つの理由が、家全体が淀みのない空間になることです。風が縦横に廻りだすと、ジメジメした北側の部屋や水回り・バックヤードなどの環境改善にも役立つだけでなく、風の道が増えることによって夏場などはエアコンをかける回数も減ると考えています。そして風と同じく光も廻るようになるわけで、このように新鮮な空気や光が廻るようになった淀みのない室内は当然、気持ちのよい場所になっていきます。
また、回遊性の動線のほとんどはむやみに無駄なスペースを使わずに成立します。減らした分を周囲にボーダレスな空間をしつらえるなど、よりフレキシブルで使いやすいものになると思いますし、なにより先に挙げた「人」・「光」・「風」の通り道に変えることで、それ以上に沢山の恩恵を受けることになるはずです。
遊びの回遊性
「回遊」は字のごとく、「回りながら遊ぶ」ということ。それは、遊びにどん詰まりを作らないということです。保育者は、遊びに深まりを持たせ、発展していくための援助をすることです。
心情→意欲→態度→心情→意欲→態度→ というように、態度が、次の心情を生んでいくことが必要になります。この回遊が、遊びに深まりと発展をもたらすことになるのです。
見守る保育 藤森メソッドのゾーン保育
コーナーとゾーン




遊んでいる最中にこんな感覚を持つことがあります。
- リラックスしているのだけど、ものすごく集中している
- 体と心が完全に一体化していて、自然に体が動いているような感じ
- 体の調子も良く、気持ちもワクワクしている
- なにもかもうまくいって最高の気分。絶好調
このような感覚は、 真剣にスポーツに取り組んでいるアスリートであれば、過去に一度は経験したことがあるそうです。
このような体験を「ゾーン体験」と言い、スポーツ選手が、極度の集中状態にあり、他の思考や感情を忘れてしまうほど、競技に没頭しているような状態を体験する特殊な感覚のことですが、これと同じような感覚を、遊びに没頭している子どもたちが持つことがあります。
この「ゾーン」体験は、人が持っている力を最大限に引き出してくれますが、それだけでなく、この体験は子どもたちにとっては、遊ぶ喜びと生きる喜びが一つになる、とても幸福な体験でもあります。その幸福感、充実感は、遊びの達成感として、何かが作れたとか、何かができるようになったとかいう結果以上に、「遊ぶことって素晴らしい!」、「もっともっと続けたい」と思えるモチベーションとなります。
「ゾーン」体験は特別な人だけに、特別な時だけに起こるものではなく、ある程度意図的に起こすことができるのです。それは、大人からの働きかけです。その重要なことが、環境の準備です。その環境とは、他の子ども、場所、出来事、物などがあります。それから、「働きかけ」があります。それは、保育者による指示ではなく、モデルとなるとか、仲間になることで主体的な体験をすることができます。また、次の段階では、他の子どもからの働きかけにより、年長児がモデルとなり年少児が模倣しようとすることから、遊びの子ども文化が伝承されていきます。
「ゾーン」体験を子どもたちがしているかということをふたつの観点から見つめます。その一つは、「感情のウェルビーイング」の度合いであり、子どもたちが気楽に感じる度合い、子どもたちが自主的に行動する度合い、子どもたちが活気と自信を見せる度合いのことです。もう一つは、「熱中、没頭(involvement)」で、それは発達のプロセスに関係するものであり、一人ひとりの子どもはどのように行動するかという重要な疑問に答えを示すものです。これは、内容が濃く、本質的に意欲が喚起される活動を支える魅力的な環境を作ることを大人に対して求めるものです。
その二つがみられない、その必要がないが使用意図があり、区切られた場所が、「コーナー」です。コーナーは、その物を行うために区切られた空間のことを指します。たとえば、「おしたくコーナー」「生き物コーナー」「食器コーナー」「図書コーナー」は、その物が用意された区切られた場所として示され、「ままごとゾーン」「観察ゾーン」「食事ゾーン」「絵本ゾーン」では、子どもがゾーン体験をしています。
見守る保育 藤森メソッドのガイドライン
乳幼児教育法10カ条 (10 Educational Concepts for Early Childhood)
第1条
すべての国民は、生まれながらにして教育される権利がある。
All Japanese nationals have the right to be educated from birth.
第2条
乳幼児に対する教育は、子どもの最善の利益が最も大切にされることが優先課題
It is important to begin children's education at a very young age as this is in the best interest of the child.
第3条
すべての乳幼児は、その発達において、今を大切にされ、自分らしく生きる権利がある。
All children have the right to receive the best possible care, beginning at birth.
第4条
乳幼児は、人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達が保障される権利がある。
All children from early childhood have the right to develop their personalities, talents and spiritual/physical abilities to their fullest potential.
第5条
乳幼児期は、生涯にわたっての教育の基礎を培う最も大切な時期であり、決して学校教育の準備期としての教育であってはならない。ただし、人生の出発点をより強固にするために、その後の初等教育との接続を大切にする必要がある。
Early childhood is the most important time for building a foundation for life-long education, not merely for preparing to enter school. It is, however, necessary to give consideration to the importance of the transition from pre-school to school in order to enable the child to successfully make this transition.
第6条
乳幼児期は、人として生きていくための意欲、探究心、社会の一員である意識、コミュニケーション能力、身体的機能の調和的発達、自律と自立などを身につけていくことが課題である。
Early childhood is a time for children as future-oriented human beings to cultivate their motivations, explore their world, and develop their awareness. In addition, early childhood is a time to learn communication skills, physical skills, and nurture autonomy and independence.
第7条
乳幼児期は、人として生きていくための意欲、探究心、社会の一員である意識、コミュニケーション能力、身体的機能の調和的発達、自律と自立などを身につけていくことが課題である。
Early childhood is a time for children as future-oriented human beings to cultivate their motivations, explore their world, and develop their awareness. In addition, early childhood is a time to learn communication skills, physical skills, and nurture autonomy and independence.
第8条
乳幼児は、自分に影響する事項について自由に自己の意思を表明することができ、自分に関係する事項については、その策定において参画することができる。
As early as possible, all children should be encouraged to express themselves freely and participate in making decisions on matters relating to themselves.
第9条
すべての乳幼児においての尊厳を大切にされ、自立を妨げることを排除する。
The dignity of all children should be respected, and their independence should be encouraged.
第10条
ここでいう乳幼児とは、生まれてからおおむね8歳までと定義する。
A child in early childhood is here defined to be below approximately eight years old.
見守る保育14条 "MIMAMORU" PARENTING"
第1条
子どもがやろうとするときに、それを自分の言葉で言うことを待ってあげ、自分からやり始められるような環境を整えてあげます。
When a child tries to initiate an action, parents should wait until the child says what he/she is trying to do, and provide the appropriate environments so that he/she can do so.
第2条
子どもが何か問題を抱えているときに、それを除いてあげようとするのではなく、自分でそれを解決できるように援助してあげます。
When parents notice that a child is having a problem, parents should not solve the problem for the child immediately, but should give support to the child so that he/she is able to work out and solve the problem.
第3条
子どもが何を考えているかを、いつも先回りして考えるのではなく、子どもの考えを聞いてあげます。
Parents should listen to, rather than guessing, what a child wants/mean to say.
第4条
子どもが誰かとトラブルを起こしたときに、自分の子だけを正当化しないで、冷静に判断しましょう。
When a child causes or gets into trouble with others, the parents should not instantly justify their own child's behaviors; instead, they should objectively analyze the cause(s) of the trouble/issue.
第5条
子どもは、何かものを与えれば喜ぶのではなく、気持ちをわかってもらうことを望んでいます。
A child wants to be understood, not to be rewarded.
第6条
子どもは、自分のために親が犠牲になることを望むのではなく、子どもから望んだときに、自分が優先順位の高いことを望みます。
A child wants the first priority to be given to him/her by the parents when he/she desires so.
This is not about having the parents sacrificing for him/her.
第7条
子どもが自分でできることや、自分でやろうとすることを手伝うことは、子どもにとっては迷惑です。
A child does not welcome parents' help when he/she thinks things can be done by himself/herself.
第8条
子どもが次第に自立していき、親が必要でなくなってくることは、うれしいことであり、さびしいことではありません。
Parents should feel happy when they see their child become independent, and not feel sad.
第9条
子どもを甘やかすことと、子どもの甘えを受容することは違います。
Spoiling a child is different from accepting a child's emotional dependence.
第10条
子どもには、それぞれの年齢で学ぶべきことがあります。早めにやらせようとすることは、かえって、時期を遅らせることになります。
A child has things to learn in accordance with his/her age. Parents' effort to give their child an advanced education can slow down the speed of learning in the long run.
第11条
子どもは自分だけで育てるのではなく、社会の中で、いろいろな場面で学んでいます。それを見守ってあげます。
Parents should let a child grow up in a community, learning things from various experiences rather than trying to raise him/her all by themselves.
第12条
発達には、順序があります。ある時期の発達を飛ばしてしまったり、順序を逆にしてしまうと、将来発達にねじれを起こしたり、後戻りをしたりしてしまうことがあります。
There are biological steps in childhood development. If a child skips one of them or takes the wrong steps, it can lead to developmental issues in the future.
第13条
子どもがやることに、いつも罰を与えたり、ご褒美をあげたりすると、それが目的になってしまい、それがなくなるとしなくなることがあります。
If parents always reward or punish a child for things he/she does, he/she might lose the sense of reason to do things or make decisions.
第14条
子どもには、やってあげるよりも、やることを見守ることが大切です。
For a child, it is more important to be kept closely observed and supported by the parents rather than to always have things done for him/her.